ハコネの険しい峠を越え、シーバス号は山を下り、湯煙が立ち上る渓谷の地――ユガワラへとたどり着きました。
「……ようやく着きましたね。この先には、古の魔導回路を癒やすと言われる『秘湯』があるはずです」
ミコトが祈祷杖を手に、立ち込める湯気に目を細めます。
消えた設計図:テツの悔恨
ハコネでの激闘で、裏切り者の男に奪われた一枚の羊皮紙。
それは、テツが心血を注いで開発した「ハト・ランナー(魔導キックボード)」の精密設計図でした。
「……クソッ。俺の署名(Tetsu's Signature)まで入ったあの図面が、あんな奴らの手に……」
テツは、源泉でシーバス号の回路を冷却しながら、悔しさに拳を震わせます。
「テツ、自分を責めるな。ハト・ランナーは俺たちの足だ。奪われたなら、力ずくで取り戻すまでだろ?」
カイの言葉に、仲間たちも力強く頷きます。しかし、その時、湯煙の向こうから冷徹な足音が響きました。
宿敵現る:魔導王の精鋭「九頭龍の牙」
「……なるほど、これが『ハト・ランナー』の設計図か。実に巧妙な折り畳み機構(Folding Mechanism)だ。魔導王様も感心しておられたぞ」
湯気の中から現れたのは、重厚な龍の鎧を纏った9人の精鋭――「九頭龍の牙(クズリュウ・ノ・キバ)」。
リーダー格の男が、奪われたあの設計図をこれ見よがしに掲げます。

「だが、この図面には肝心の『潮汐クリスタル』の安定化プロセスが記されていない。……テツと言ったか? その続きは、我らの監獄でじっくりと書き上げてもらう」
「俺の技術を……魔導王の道具にするつもりか!」
テツの怒りが爆発します。しかし、九頭龍の牙は一糸乱れぬ連携でシーバス号を包囲しました。
「全員、戦闘準備! ユガワラの湯を赤く染めるわけにはいかないわ!」
ツバメがクナイを構え、湯煙の中、最強の部隊との決戦が幕を開けました。
(後編へ続く)